『本草図譜』は江戸時代最大の植物図鑑である。著者の岩崎灌園(1786~1842)は三河の人で、名は常正、通称は源三。本草学者・小野蘭山の最晩年の弟子で、ほかに『本草育草』や『武江産物誌』などの著書がある。
『本草図譜』は全95冊で、原稿本は文政11年(1828)に完成した。写本がいく種類も作られ、また印刷出版も試みられたが、江戸時代には山草部(巻5~8)と芳草部(巻9~10)が刊行されたのみで、100年近く経た大正11年(1922)に至ってようやく全冊の刊行をみた(本草図譜刊行会刊)。2000種に及ぶ植物図を収め、和文による解説が付されている。
所掲の版本は本草図譜刊行会の大正版で、木版刷を重ねた多色刷。日本ならではの版画技術を駆使した豪華版で、精緻を究めている。
(小曽戸洋)